福岡地方裁判所小倉支部 昭和44年(ワ)479号 判決
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〔判決理由〕第二、被告洋子、同シズの住居侵入、窃盗
一、被告洋子、同シズが、昭和四四年四月六日原告の住居から被告の所有物を持帰つたことは、当事者間に争いがなく、<証拠略>を綜合すると、被告洋子は、昭和四三年六月一二日原告、その父潤、母テイを相手方として、大分家庭裁判所に、内縁関係解消、慰藉料五〇〇、〇〇〇円の支払い、被告洋子の所有物件の引渡しを求める調停の申立をし、同調停事件は福岡家庭裁判所小倉支部に移送されたが、第三回調停期日において不成立に帰したこと(右事実は、調停申立の日、相手方の数、慰藉料の額を除き、当事者間に争いがない)、その後被告側は原告方に数回被告洋子の荷物を引取りに行つたが、その都度居留守を使われるなどして、目的を達しなかつたので、前記昭和四四年四月六日に被告シズ、同洋子は、訴外吉松文平、奈須野利秋ら親類、縁者と共に、原告の肩書住所の社宅を訪れ、声をかけたところ、原告は勝手口から出てきたが、そのまま警察官の連絡所に行つたので、右吉松外二名も原告の後から連絡所に行き、同所で居合せた警察官杉村福男に交々善処方を訴え、同人も双方に話合いで解決するよう説得したが、解決せず、そのまま訴外吉松らは原告の社宅に引返し、被告洋子が風呂場の硝子戸をはずして屋内に入つたうえ、玄関の錠をあけ、そこから被告洋子が嫁入りの際持参した同被告の箪司、洋服箪司、整理箪司、水屋、冷蔵庫、洗濯機等を運び出して、用意してきたトラックに積み終つた頃、原告がその場に帰り、次いで前記杉村巡査、および訴外尋木巡査外二名の警官も到着して再び双方から事情を聞いたが、結局運び出した荷物の中に原告の所有物があるかどうか調べることになり、原告自ら一々点検したところ、原告のハンガー、食パン、バター入れ、インスタントコーヒー、洗濯機等があつたので、それらを取戻した。そして、警官らも別段制止しなかつたので、被告洋子らは、トラックに積んだ荷を大分の自宅に持ち帰つたこと、以上の事実を認めることができる。<証拠判断略>
二、前項認定の事実によると、被告洋子、同シズは、原告の社宅に無断で侵入し、原告が占有する被告洋子の所有物を持帰つたことが明らかである。従つて、被告洋子らの右行為は、形式的には窃盗罪に該当するものと考えられなくはないが、前記第一で認定した経緯に照らすと、もともと被告洋子の所有物は、同被告が原告と共同生活を営んでいた間は、同被告が占有していたところ、同被告が内縁関係を破棄して原告のもとを去つたときから、原告の事実上直接占有するところとなつたが、原告としては、被告洋子との内縁関係が解消した以上、同被告が相当な期間内にその所有物を引取るまでの間これを保管すべき義務はあるが、同被告の所有物の返還要求を拒み、これを占有し続ける適法な権原はないものというべきであり、この点に被告洋子らが同被告の所有物を持帰つた際の前記認定の事実を併せ考えると、同被告の右行為は、一種の自力執行であつて適法とはいい難いけれども、これによつて原告が、金銭賠償を必要とする程の精神的損害を受けたものとは認められないので、被告洋子、同シズの住居侵入、窃盗を理由とする原告の慰藉料請求は失当である。
(森永龍彦)